カメラ疲れしていた編集者に撮る楽しさを思い出させてくれたFUJIFILM「X-T4」

FUJIFILM
FUJIFILMカメラ

そもそもなぜカメラに疲れてしまったのか?

雑誌制作の現場がフィルムからデジタルへ移行して、かれこれ10年以上は経つでしょうか。もしかしたら20年近いかもしれません。かつてフィルムの時代は取材現場の立場がくっきりと分かれていた気がします。

編集者、ライター、カメラマン。

この3人が基本構成で、例えばファッション誌の撮影ならそこにクライアントやスタイリスト、ヘアメイク、モデル、各アシスタント。さらに大きなお金が動くような案件ならディレクター、デザイナーといった人たちが現場に参加することもあります。

私がこれまで携わってきた紙媒体のジャンルは主にバイク雑誌と男性向けライフスタイル誌なので、ほぼほぼ基本構成の3名で1チームです。

ところがこの20年弱の間に一眼レフがデジタル化したことで、身も蓋もない言い方ですが「そこそこの写真なら誰でも撮れる」時代になりました。もちろん前提として“そこそこのカメラ”も必要ですが。

となると取材現場のメンバー構成に時々変化が出てきます。私は元々文章を書くことが好きだったので原稿はよく書いていました。編集兼ライターという形で活躍されている方が多いですが、まさしくそんなイメージです。というか雑誌屋さんならほとんどの編集部員が何かしら毎号のように原稿を書いているでしょう。

さらに趣味の域でしたが10代から一眼レフカメラには触っていたので、なんとなく機材の使い方もわかるし“そこそこ”の写真も撮れたりします。

となると自分の仕事の役割が「編集&ライター」or「編集&撮影」のように兼業する現場が増えていきました。悲しくも紙媒体が売れない時代、経費削減の意味もあり編集部としても苦渋の決断です。

それぞれのプロフェッショナルが自分の最大限のパフォーマンスをすることで、質の良い記事が仕上がります。それに間違いはありません。しかし、そう贅沢なことも言ってられなくなったのです。

時には編集・執筆・撮影の3役すべてを担うこともあります。さらに簡単なインフォメーションページならInDesignでページのレイアウトを組むことも…。もう、自分が何屋さんかわからないですね。

そんなこんなで仕事の現場でカメラに触る機会が増えると、プライベートで重いカメラを持ち出して撮影する気力が失われていきます。「iPhoneでも綺麗に写せるし、手軽だよねっ!」となるわけです。

そう、iPhone。この登場も大きかったですね。

ずっと気になっていた富士フイルムのデジタル一眼レフ

そんなわけで私のメイン機材は長らくNikon D7200でした。街角の大看板レベルまで画像を引き伸ばして印刷するわけではないので、APS-Cでも十分に雑誌の印刷に耐えられます。写真を大きく使ったとしてもたかだかA4サイズですから。

2015年に登場したD7200は当時、中級機のフラッグシップモデル。D7000番台モデルの3代目です。個人的には後々登場するD7500やD500と比べても遜色のない名機だと思っています。非常にバランスが取れた良いカメラなので、何不自由なく仕事で活躍してくれました。

2018年12月末、雑誌「男の隠れ家」編集部を退職し、会社員からフリーランスになった時のことです。

3年間使用してきてクリティカルな問題点が一つもないD7200に不満はなかったのですが、タスクにひたすら追われる仕事から離れたことで「写真をあらためて楽しみたいな」という思いが湧いてきました。

そして「それにはD7200ではダメだ」と思ったのです。もっと軽やかに撮影したい、その一心でした。

最初に目についたのは2019年発売のX-T30だった

2019年2月14日に発売されたFUJIFILM X-T30。とあるカフェで仕事の原稿を書いているとき、息抜きで見たニュースサイトでその存在を知りました。

それまでの私はプロフィールの年表にもある通り、Nikon命のNikon過激派。デジタルをリードしていたCanonは良いメーカーだと分かりつつも、長年親しんできたNikonへの愛着はもはや執着に近いくらい。

SONYやPanasonicに至っては「所詮、電気屋だろう」とひどい偏見。「現行の国産カメラメーカーで許されるのはNikonかCanon、PENTAXのみ」とまで言いかねない始末でした。(怒らないでね)

そんな中でのFUJIFILMです。そう、富士フイルム。

これまでの流れでいくと「所詮、フィルム屋だろう」と言い出しそうなものですが、富士フイルムは別枠です。

手にしたことはないですがフジノンレンズの素晴らしさはよく聞いていたし、やはりフィルムカメラから入っているので絶大なる信頼がすでに己の中で構築されていました。

ということで特にアレルギーを感じることもなく、気がつけば公式サイトのリンクをクリックしていたのです。

そして2022年の年始に入手したのがX-T4である

一言で言うならばX-T30に恋をしました。

プロダクトデザイン、フィルムシミュレーション。軽やかに写真を撮るなら「これだ」と思いました。

とはいえ独立したばかりで収入も不安定、先々どうなるかわからないしあまり大きな買い物はしたくない。すぐに飛びつくのではなく、一定期間を置くことでレビューも増えていくだろう。

機材の良し・悪し、買う・買わないの判断はそれからでも遅くない、そう自分に言い聞かせているうちに1年が経ちました。なんせ仕事はD7200で賄えていたので、必要に迫られていなかったというのもあります。

この時点ではX-T30を「趣味カメラ」という視点で見ていたのかもしれません。

月日はあっという間に流れ、2020年2月。X-T4が発売されました。

Xシリーズのフラッグシップモデル、ボディ内手ブレ補正搭載…。ずっと富士フイルムが気になっていたこともあり、ニュースリリースにはすぐに飛びつきました。

単純にめちゃくちゃかっこいい。デザインからしてど真ん中、大本命。このカメラが欲しい!

そして私は、またも同じことを繰り返すのです。そう、購入意欲を寝かせるというマゾヒスティックな行為

それから2年(長い!)、X-T4を超えるど真ん中な新機種は発売されませんでした。そして、その2年で自分の収入もかなり安定し、年に数十万円は仕事に使う機材を購入し経費計上したいという状況に。

状況がすべて整い満を持して2022年1月、ついにX-T4を購入したのです。

X-T4の良いところとダメなところ

前置きがかなり長くなりましたが、そんな前提を踏まえた上で「カメラに疲れた編集者に撮る楽しみを思い出させてくれた」X-T4の良いところとダメなところを綴りたいと思います。

購入から1年ちょっと、プライベートでも仕事でも今はX-T4が活躍しています。とはいえ、個人的見解なので購入したいと思う人の参考になるかはわからないですが…。

X-T5も発売されたことですし、こういうレビュー記事の需要があまりなさそうだというのは、気が軽くていいですね。

1年使って感じた素敵な部分とは?

1.機械的でわかりやすいプロダクトデザイン

素敵な部分いっぱいあります! まず、なんと言ってもそのデザイン。シャッタースピード、ISO感度、露出がダイヤル式で一目でわかる。これはアナログなフィルムカメラ時代を思い出せて楽しいです。

そして絞りはレンズで決める、これも良いですね。

このデザインであることで、電源がOFFの状態でもカメラがどんな状況でスタンバイしているのか分かります。極端な話、電源OFFの状態でも設定を決めてしまえるので、それがしっかり整っていればONにしてすぐパチっと撮影できるのです。

2.EVFファインダーの美しさ

ファインダーのあるミラーレス機を初めて手にしたので、EVFファインダーの美しさには本当に驚きました。そして、ボタン一つで簡単にEVFファインダーに切り替えられること。特にフィルムシミュレーションをいじりながら撮影する時に便利だなぁと感じます。

3.フィルムシミュレーションすごすぎ問題

1にも2にも、これに尽きるとは思うのですが富士フイルムといえばフィルムシミュレーションですよね。今さらここで語るまでもないくらい、皆さんご存知だと思います。

私の場合、仕事で撮影する時はPROVIAかASTIAを使用することが多いです。やはりクセがあまりなく、扱いやすくオールマイティなところが良い。

プライベートで撮影する際はクラシックネガやETERNA、クラシッククロームあたりの出番が多い気がします。

クラシッククローム 露出プログラム: 絞り優先

どちらにせよエフェクト調整も活用したら無限に楽しめると思うほど、多彩なラインアップなので飽きることがありません。し、まだまだ使いきれていないです。

4.軽さと小ささ

X-T5が発売された今、X-T4を「軽い、小さい」と言うと「は?」と思われるかもしれませんが、D7200にバッテリーグリップを装着していた身からすると鬼ほど軽いです。そして恐ろしく小さいです。

カメラバッグがめちゃくちゃ軽くなりました。肩こりと腰痛持ちなので、この軽量化は本当に買ってよかったと思うポイントです。

お散歩カメラで稼働する時には「XF27mmF2.8 R WR」を装着することが多いのですが、気分はもうコンデジです。首からぶら下げていても仰々しくならないのが良いですよね?

5.手に馴染む感じが素晴らしい

富士フイルムのデジタル機は初なので他と比べようがないのですが、個人的にはとても手に馴染むグリップです。浅すぎず深すぎず。この辺はそれぞれの手の大きさや慣れもあると思うので、一概には言えない部分ですが。とにかく安定して持っていられます。

これってどうなの?と思う部分について

反対にネガティブな部分を書きたいと思います。

……書きたいと思うのですが考えても出てきません。強いて挙げるとしたらバッテリー持ちくらいでしょうか? でもこれに関しては予備バッテリーやポータブル電源を車に準備しておけばいいだけですし、大した問題ではないと思っています。

それに「すごく悪い」というわけではないので、普通に使う分には全然大丈夫です。(普通ってなに? という問答はやめておきましょう)

今のところそれ以外に「どうなの? ダメじゃない?」と思う部分はないです。(断言)

「撮影する」という行為そのものの楽しさは富士フイルムの強み

X-T4を入手してから、とにかく写真を撮るという行為が楽しくなりました。撮って出しjpgの美しさと手軽さ、昔のフィルム一眼を想起させるデザインと操作感、手に馴染む道具としてずっと持っていたい気持ち。

何もかもがオートで綺麗に画を作り上げてくれるスマホカメラとは対極ですが、それが楽しいんだとあらためて思い出せました。

犬の散歩やちょっとしたお出かけに連れていきたくなる、それこそがカメラに求めていたことで、富士フイルムに託した部分でした。

想像以上に余りあるほどに、その希望を叶えてくれたX-T4。まだまだ手放せません。

そして、富士フイルムの沼に落ちてしまった私が今後どんなカメラを買い増していくのか、自分でも楽しみです。

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